
新規事業の顧客理解|失敗を避ける考え方2つと、明日から使える実践手法5つ
「アイデアは固まったが、本当に顧客が求めているのか自信がない」「社内では良い案だと言われたのに、顧客に聞くと反応が薄い」新規事業に取り組む担当者から、こうしたご相談をよくいただきます。
新規事業では、技術やアイデアが優れていても、顧客が本当に困っていること(ニーズ)と合っていなければ、事業として成り立ちません。そこで重要になるのが、事業の初期から顧客を理解する取り組みです。
この記事では、顧客理解の土台になる考え方2つと、すぐに試せる実践手法5つ、国内企業の例、成果につなげるポイントを整理します。
なぜ新規事業に「顧客理解」が必要なのか
米国の調査会社CB Insightsが、失敗したスタートアップを分析した調査では、失敗理由の最多が「市場ニーズがなかった」で、約42%とされています。
※ この調査は、主に米国のスタートアップを対象にしたものです。日本の大企業の新規事業にそのまま当てはまるわけではありませんが、「ニーズの確認が足りないまま進める」リスクの大きさを示す例として、よく引用されています。
優れた技術や、社内で評価の高いアイデアであっても、顧客が「いま、お金を払ってでも解決したい課題」でなければ、事業は育ちません。だからこそ、事業の早い段階で、顧客を理解する時間をとることが大切です。
顧客を「人」として捉える2つの考え方
1. H2H(Human to Human)
BtoBでもBtoCでも、意思決定をするのは「人」です。たとえば、法人向けのサービスでも、担当者は「会社の課題を解決したい」という組織の視点と、「失敗したくない」「上司に評価されたい」という個人の感情の、両方を持って判断します。
顧客を「企業」や「属性」としてだけ見るのではなく、判断する個人の事情や感情まで想像することで、課題の捉え方が変わります。
2. ジョブ理論
ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセン教授らが提唱した考え方で、顧客は商品そのものではなく、「片付けたい用事(ジョブ)」を解決するために商品を雇う、と捉えます。
よく引用されるのが、ミルクシェイクの事例です。「どんな属性の人が買うか」ではなく、「朝の通勤中に、片手で長く食べられるものが欲しい」というジョブに着目した、という話です。属性ではなく、状況と目的を見ることがポイントです。
明日から使える、顧客理解の実践手法5つ
手法1: 行動観察
顧客が実際にどう行動しているのかを、現場で観察する手法です。本人が意識していない「回避している行動」や「別の方法で代替している行動」に、課題のヒントがあります。
実践のコツ:
事前の仮説をあまり持たずに観察し、「なぜそうしているのか」という疑問を記録する
観察の対象は、ヘビーユーザーだけでなく、使っていない人も含める
手法2: ユーザー(顧客)インタビュー
顧客に直接話を聞く、最も基本的な手法です。ただし、聞き方で得られる情報が大きく変わります。
実践のコツ:
「このサービスがあれば使いますか」といった未来の意向ではなく、過去の具体的な行動を聞く(「最後にそれをしたのはいつですか」「そのとき、どうしましたか」)
「なぜ?」を重ねて、背景にある理由まで深掘りする
話を聞いた後、そのまま鵜呑みにせず、複数人の話から共通点を探す
手法3: カスタマージャーニーマップ
顧客が、課題に気づいてから、解決策を探し、選び、使うまでの流れを時系列で整理する手法です。
実践のコツ:
各段階で、顧客が「困っていること(ペインポイント)」と「印象が決まる瞬間」を書き出す
自社が関われる場面と、介入すべき場面を特定する
想像だけで作らず、手法1・2で得た事実をもとにする
手法4: プロトタイピングとユーザーテスト
完成した製品を作る前に、簡易的な試作品で顧客の反応を確かめる手法です。目的は、完成度を上げることではなく、仮説が正しいかを確かめることです。
実践のコツ:
画面のモックアップや、紙・段ボールなどの簡易な試作でも、十分に反応を得られる
「使いやすいか」だけでなく、「本当に必要としているか」を見る
手法5: 低予算ではじめるクイック調査
大きな予算がなくても、始められる調査があります。
SNSでの発言を分析する(ソーシャルリスニング)
既存顧客に短いアンケートを取る
カスタマーサポートへの問い合わせ内容を分析する
実践のコツ:
まずは手元にある情報から始め、仮説を作る材料にする
見えてきた仮説は、手法2のインタビューで確かめる
国内企業の例から学ぶ
トヨタ自動車「Edeson」:発注者と受注者の「行き違い」に着目
トヨタ自動車の社内新規事業制度から生まれた事業で、製品開発・製造における、発注者とメーカーの要件定義の行き違いという課題に着目しています。事業化の段階では、受注者側(小規模の事業者)と、発注者側(ハードウェアスタートアップや大企業の新規事業部門)の双方にヒアリングを実施しています。事業の起案者自身の、ものづくりの現場での経験が、課題の発見につながった例です。(出典: 新規事業支援AlphaDriveの支援事例ページ)
学べる点: 課題を抱える当事者(発注者と受注者の両側)に直接話を聞くことで、立場の違いから生じる課題が見えてくる。
ファミリーマート「コンビニエンスウェア」:「緊急で買うもの」から「目的買い」へ
コンビニの衣料品は、これまで、急に必要になったときのための、無難な商品が中心でした。ファミリーマートは、これを、目的を持って買いに来てもらえる商品へと捉え直し、2021年3月から、デザイナーの落合宏理氏を起用したシリーズを全国で展開しました。ソックスは、発売から9ヶ月で累計100万足を超えたと報じられています。(出典: ダイヤモンド・チェーンストアオンライン)
学べる点: 顧客が「どんな場面で・何のために」その商品を手に取るのかを捉え直すことで、既存の売り場でも新しい価値が生まれる。
顧客理解を成果につなげる2つのポイント
1. 「顧客の困りごと」と「自社の得意なこと」の重なりを探す
顧客の課題がわかっても、自社が解決できる領域でなければ、事業にはなりません。顧客の本当の困りごとと、自社が強みを活かせる領域の重なりを探すことが、競合に真似されにくい価値につながります。
2. 小さく始めて、学びを重ねる(MVP)
MVP(Minimum Viable Product:実用最小限の製品)は、最小限の機能で、仮説を確かめるためのものです。売上を立てること以上に、「顧客が本当に求めているか」を確かめることが目的です。小さく始め、顧客の反応を見ながら、直していきます。
最後に
顧客理解は、一度やれば終わるものではなく、事業の成長に合わせて続けていく取り組みです。市場や顧客のニーズは変わるため、継続的に顧客と対話し、仮説を更新していく姿勢が大切です。
一方で、社内だけで顧客に会い、仮説を検証するのは、時間も手間もかかります。EmpowerXの「新規事業のテストマーケティング代行」では、テレアポを通じた見込み顧客との1対1の商談を通じて、顧客の声を集め、仮説の検証から意思決定までを支援しています。商談は「お金が動く前提の会話」のため、アンケートや通常のインタビューよりも、本気度や背景まで理解しやすい点が特長です。アイデアの段階からでも、お気軽にご相談ください。




