
アカウント型営業のやり方|大型案件を確実に受注する手法
2026/6/1
アカウント型営業(ABM)とは何か?従来営業との違いは?
アカウント型営業(ABM=アカウント・ベースド・マーケティング)とは、LTVの高い特定企業を絞り込み、マーケ・IS・営業が一体となって大型案件を受注する戦略的BtoB営業手法です。従来の「量をこなす」プロダクト営業や御用聞き営業とは大きく異なります。
従来型営業との主な違いは以下の通りです:
ターゲット設定:従来は広範なリストへのアプローチ → ABMは企業名レベルで絞り込んだターゲットアカウントへの集中投資
コンテンツ:汎用的な資料 → アカウントごとにパーソナライズされた提案・コンテンツ
組織体制:部門ごとの縦割り → マーケ・IS・営業の三位一体アラインメント
KPI:リード数・商談数 → ターゲットアカウントのエンゲージメント率・LTV
パーソル総合研究所の調査によると、アカウント営業は取引回数が多く継続性が高い傾向にあり、「多くの関係者と論点を育てるプロセス」を経ることで継続的に大型案件に結び付くスタイルと報告されています。
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なぜ日本企業のABMは失敗するのか?組織の壁の正体とは?
日本企業のABM失敗の主な原因は、マーケ・IS・営業の評価指標がバラバラで、部門間に情報の断絶が生じることにあります。「営業の縄張り意識」と「部門最適化」がABMの本質である横断連携を阻んでいます。
具体的な失敗パターンは次の3つです:
評価指標のズレ:マーケはMQL(マーケティング適格リード)数、ISは架電数・アポ数、営業は受注金額と、各部門が異なるKPIを追うため、ターゲットアカウントへの集中投資が機能しません
情報の分断:CRM/SFAへの入力が形骸化し、アカウントの状況が各担当者の頭の中にしか存在しない状態になります
現場営業の行動変容の遅れ:アカウントを絞り込んでも、現場が従来通りの「とりあえず訪問・とりあえず提案」を続けてしまいます
戦略的アカウント営業の実践事例を持つ企業の調査では、「研修はやったが成果につながっていない」という状況が珍しくなく、2〜3日のトレーニングで終わるケースが多いと指摘されています。ABMは組織として機能させる仕組みが不可欠です。
ターゲットアカウントの選定方法は?LTV最大化の手順
ターゲットアカウント選定は、単なる「大企業リスト」ではなく、自社のLTVを最大化する企業を企業名レベルで特定するプロセスです。解像度の高い選定が、その後の全施策の精度を決定します。
ステップ1:過去受注データから理想顧客プロファイル(ICP)を逆算する
まず自社のCRM/SFAから、過去3〜5年の受注データを抽出します。LTVが高い顧客の共通属性(業種・従業員規模・売上規模・導入部門・課題カテゴリ)を分析し、理想顧客プロファイル(ICP)を定義しましょう。属性データ(FIRMOGRAPHICS)だけでなく、「どの課題を持っていたか」という定性情報も必ず含めます。
ステップ2:インテントデータで購買シグナルを検知する
ICPに合致する企業の中から、今まさに購買検討している企業を絞り込むためにインテントデータを活用します。インテントデータとは、企業のWeb行動(特定キーワードの検索・競合サイトへの訪問・関連コンテンツのダウンロード等)から興味関心を数値化したデータです。これにより、営業リソースを「今動いている企業」に集中できます。
ステップ3:ターゲットリストを企業名レベルで確定する
ICPとインテントデータを掛け合わせることで、自社にとってのターゲット企業を企業名まで正確に把握できます。ABMツールを活用した顧客データの分析と抽出により、日本国内で3,302社というように具体的な数値でターゲットを特定することも可能です。大手上場企業を中心に2,500社以上の導入実績を持つABMツールでは、このターゲット特定プロセスを大幅に効率化できます。
マーケ・IS・営業の役割分担は?部門間アラインメントの実践法
ABMにおける部門間アラインメントの核心は、「共通のターゲットアカウントリスト」と「共通のKPI」を三部門で持つことです。これだけで情報断絶の大半は解消されます。
各部門の役割を再定義すると:
マーケティング:ターゲットアカウント向けのパーソナライズコンテンツ制作・広告配信・イベント設計を担当します。リード数ではなく「ターゲットアカウントのエンゲージメント率」をKPIにします
インサイドセールス(IS):インバウンド対応から脱却し、ターゲットアカウントへの戦略的アウトバウンドにシフトします。アカウントごとのシナリオに基づいてキーマンへの接触を設計します
フィールド営業:決裁権者・経営層への提案活動に集中します。ISから引き継いだアカウント情報をもとに、組織的な対応力を発揮します
CRM/SFA(Salesforce等)とMAツールを形骸化させないためには、入力ルールの統一と、週次のアカウントレビュー会議が有効です。パーソル総合研究所の調査では、「現場実態と課題を整理し、改善の道筋を描き、社内提案の準備まで顧客と一緒に行ったことがスピーディな案件化の決め手になった」と報告されており、組織的な対応力こそが大型案件受注の鍵となっています。
キーマンに辿り着けない場合の対処法は?決裁者アプローチの手法
ターゲット企業内の決裁権者(キーマン)に辿り着けないことは、ABMでよく見られる課題です。解決策は「現場担当者を経営説明の味方にする」ことにあります。
具体的なアプローチ手順:
現場課題を数値化する:現場担当者が抱える課題を「月80時間の再検査工数」「欠品率○%」のように数値で整理し、改善効果を試算します
経営説明用資料を共同作成する:現場担当者が上層部に提案できる資料を営業側が準備します。「この資料があったから経営に説明できる自信が持てた」という声が実際に上がっています
段階的な検証で実績を作る:まず1部門・1拠点での小規模導入で効果を可視化し、その結果を使って全社展開の承認を取り付けます
マルチスレッド化する:1名の担当者だけでなく、複数の部門・役職の関係者と接点を持ち、組織全体でのエンゲージメントを高めます
ABMツールの費用相場は?導入コストの目安
ABMツールの費用相場は、初期費用が10万円程度、月額利用料は2万〜10万円程度、初年度の総コストは500万円程度が目安です。
費用の内訳イメージ:
初期費用:5万〜20万円程度(設定・データ連携・オンボーディング費用を含む)
月額利用料:2万〜10万円程度(利用企業数・機能範囲によって変動)
初年度総コスト:500万円程度が相場(ツール費用+運用工数+コンサルティング支援を含む場合)
ツール選定のポイントは、自社のCRM/SFAおよびMAツールとのデータ連携が可能かどうかです。インテントデータの精度と、ターゲットアカウントの企業名レベルでの特定精度も重要な評価軸になります。大手上場企業を中心に2,500社以上の導入実績を持つツールであれば、日本企業特有の組織構造にも対応した運用サポートが期待できます。
ABM導入の失敗を回避するには?セールス・イネーブルメントの活用法
ABM導入後の失敗リスクとして、現場営業が従来通りのアプローチを続け、戦略と行動が乖離することが挙げられます。これを防ぐのがセールス・イネーブルメント(営業有効化)の視点です。
セールス・イネーブルメントの具体的な施策:
アカウントプランの共通化:各ターゲットアカウントの組織図・課題・関係者マップ・アプローチシナリオをテンプレート化し、全営業が同じ情報基盤で動けるようにします
コンテンツの整備:業種別・課題別・フェーズ別のコンテンツライブラリを構築し、営業が適切なタイミングで適切な資料を使えるようにします
勝ちパターンの横展開:大型案件を受注した事例のプロセスを分解し、組織全体に水平展開します。1人が成功すれば、あとは水平展開で広がるため、最初の成功事例の作り込みが重要です
定期的なパイプラインレビュー:ターゲットアカウントごとの進捗を三部門合同で週次レビューし、停滞案件への早期介入を可能にします
ABMの導入・推進に課題を感じているマーケターやインサイドセールスの方へ。ターゲットアカウントの特定から部門間アラインメントの設計、CRM/SFA連携まで、実務に即したコンサルティングとツール提供で支援します。まずはお気軽に資料請求・お問い合わせください。
よくある質問
アカウント型営業とABMは同じ意味ですか?
基本的に同義です。ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)はマーケティング視点の呼称で、アカウント型営業は営業視点の呼称ですが、どちらも特定企業に絞り込んで部門横断で大型案件を狙う手法を指します。
ABMはどのような規模の企業に向いていますか?
受注単価が高く、意思決定に複数の関係者が関与するBtoB企業に適しています。特に年間契約額が数百万円以上の商材を扱う企業で効果が出やすい手法です。
ターゲットアカウントは何社程度に絞るべきですか?
営業リソースに応じて異なりますが、1名の営業担当者あたり20〜50社程度が目安です。絞り込みすぎず、かつ全社に深く関与できる範囲に設定することが重要です。
インテントデータはどこから取得できますか?
Bombora・G2・6senseなどの海外ツールや、国内のABMツールが提供するインテントデータを活用できます。自社サイトのアクセスログや資料ダウンロード履歴も一次インテントデータとして有効です。
ISがアウトバウンドにシフトする際の注意点は何ですか?
ターゲットアカウントごとのシナリオ設計が不可欠です。単なる架電量の増加ではなく、アカウントの課題仮説を持ったうえでのパーソナライズされたアプローチが求められます。
ABMツールの導入初年度にかかる費用はどのくらいですか?
初年度の総コストは500万円程度が相場です。初期費用は10万円程度、月額利用料は2万〜10万円程度が目安で、コンサルティング支援費用が加わる場合があります。
CRM/SFAを形骸化させないためにはどうすればよいですか?
入力ルールの統一と週次のアカウントレビュー会議が有効です。三部門が同じ画面を見ながら進捗を確認する習慣が、入力率と情報品質を高めます。
キーマン(決裁者)に会えない場合の突破口は何ですか?
現場担当者が経営層に提案できる「効果試算資料」を営業側が共同作成することが突破口になります。担当者を社内の味方にする支援型アプローチが有効です。
ABMの成果が出るまでにどのくらいの期間がかかりますか?
一般的に6〜12ヶ月程度が目安です。ターゲットアカウントへの接触から関係構築・提案・受注までのサイクルが長いため、短期的なリード数ではなくパイプライン金額で進捗を評価することが重要です。
セールス・イネーブルメントとABMはどう連携させますか?
アカウントプランの共通化とコンテンツライブラリの整備が連携の核心です。営業が「どのアカウントに・いつ・何を使って」アプローチするかを標準化することで、組織全体の再現性が高まります。
結論
アカウント型営業(ABM)で大型案件を受注するには、①インテントデータと過去受注データでターゲットアカウントを企業名レベルで特定し、②マーケ・IS・営業の評価指標を統一して三位一体で動き、③セールス・イネーブルメントで現場の行動変容を促す、この3ステップが不可欠です。ツール導入だけでは不十分で、組織の仕組みと人の動き方を同時に変えることが成功の条件となります。まず自社のICP定義とアカウントリスト作成から着手してください。
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