新規事業の営業・マーケが進まない原因は?ファネル別の診断と立て直し方
事業のアイデアや仮説はある。サービスの説明資料も作った。それでも、顧客開拓や売上づくりが思うように進まない。
大手企業の新規事業開発室では、事業計画の更新、社内説明、関係部署との調整と並行して、営業やマーケティングを進める必要があります。少人数のチームでは、顧客と接点を持つ時間そのものが足りなくなることもあります。
こうした状況では、最初に「顧客との関係が、どこで止まっているか」を整理します。接点がないのか、課題を確認できていないのか、検討が進まないのかによって、必要な行動が変わるからです。
本記事では、事業仮説がある段階から営業・マーケティングを始める企業に向けて、EmpowerXの実務知見をもとに、ファネル別の確認事項と最初の一手を解説します。
新規事業のファネルは、次に確かめることを見つけるために使う
営業・マーケティングのファネルは、顧客との接点から、課題の理解、具体的な検討、購入、利用・継続までを整理したものです。
新規事業では、顧客がこの順番を一度で進むとは限りません。商談を通じてターゲットを考え直す場合も、導入後の反応から訴求を見直す場合もあります。
まずは、次の5つの状態で活動を点検します。
接点がない・届かない:対象企業や担当部署、接点情報を見直す。
会話はできる:実際に困っている業務と、その背景・影響を確かめる。
関心はある:検討に足りない事例・判断材料・次の対話を用意する。
提案している:購入や導入を止める条件、関係者、役割を整理する。
利用している:価値を感じ、使い続けられているかを確かめる。
この整理によって、「リードが足りない」という一言の中にある問題を分けられます。
1.顧客と接点がないときは、対象と届き方を確認する
アウトバウンドを実施しても、担当者と話せない。メールを送っても、反応が得られない。この段階では、顧客の需要について判断する材料がまだ不足しています。
EmpowerXの営業実務でも、過去の商談履歴がある企業への再接触で、担当者情報の古さが接触を妨げているケースが確認されています。そこで説明文だけを変えても、顧客の反応を確かめる機会は増えません。
確認したいのは、主に次の点です。
その課題を持つ企業・部署を選べているか
現在の担当者や窓口に届いているか
相手の業務に関連する連絡理由が伝わっているか
接触する時期や手段に無理がないか
接点がない場合は、ターゲット選定、リスト作成、接点情報の確認から始めます。担当者と話せた後の反応と、担当者に届かなかった結果は分けて記録します。
2.会話はできるが進まないときは、課題の捉え方を見直す
「興味があります」「資料を見ておきます」という返答だけでは、顧客が何を解決したいのかは分かりません。
資料請求フォームで選ばれた課題も、会話を始めるための仮説として扱います。情報収集のために選んだ項目と、実際に優先して解決したい問題が一致するとは限らないためです。
例えば、次の順番で状況を確かめます。
何をきっかけに情報を探したのか
現在、その業務をどのように進めているのか
どこで負担や不都合が生じているのか
その状態が続くと、誰にどのような影響があるのか
すでに試した対策や、変えにくい条件はあるか
この段階では、課題がまだ確認できていない状態と、課題はあるが優先度が低い状態を区別します。探索中の顧客に予算や導入時期がないことだけを理由に、可能性を判断するのも早計です。
3.関心はあるが検討が進まないときは、不足する判断材料を特定する
顧客がサービスに関心を示していても、社内で検討する材料が不足していれば、次の行動は起こしにくくなります。
ここで役立つのが、事例記事、ホワイトペーパー、ウェビナー、説明資料です。何を作るかは、顧客が判断できずにいる内容から決めます。
自社に近い企業でも使えるか:導入前の状況が分かる事例を用意する。
導入後に誰が何をするのか:役割分担や運用手順を伝える。
既存の方法から変える意味はあるか:比較の観点や適用条件を整理する。
社内でどう説明すればよいか:課題・支援範囲・判断材料を資料にまとめる。
例えば、導入後の役割が伝わっていない場合は、運用を説明する資料が候補になります。一方、実際に顧客側の負担が大きすぎる場合は、支援範囲やサービス設計の検討が必要です。
顧客の反応をもとに、情報を補う問題なのか、提供内容を見直す問題なのかを切り分けます。
4.商談はあるが受注に進まないときは、検討の進み方を確かめる
商談数が増えても、顧客の検討が前進しているとは限りません。
特に大手企業への提案では、利用部署、予算を持つ部署、情報システム部門、購買部門など、複数の関係者が関わる場合があります。
商談では、次の対話で何を確認するかまで合意します。
誰が利用し、誰が判断に関わるのか
導入を検討する目的は共有されているか
運用・契約・社内手続きで確認が必要な条件は何か
次回は誰が参加し、何を判断するのか
インサイドセールスから商談担当へ引き継ぐ際も、関心の有無に加えて、確認できた課題、未確認の条件、顧客と約束した内容を渡します。
商談の「件数」と「進捗」を分けて見ることで、集客を増やすべきか、提案や引き継ぎを改善すべきかを判断しやすくなります。
5.受注後は、利用と継続から仮説を確かめる
新規事業では、購入に至った理由と、使い続ける理由が異なることがあります。
導入時には期待されていた機能が使われず、別の用途に価値が見いだされる場合もあります。営業・マーケティングは、こうした利用後の情報にも接続する必要があります。
確認するのは、利用開始までのつまずき、実際に使われる場面、期待との違い、継続に必要な条件です。
その情報は、ターゲットの見直し、説明内容の改善、次の事例制作に活用できます。受注や利用が一件生まれた時点で、PMFが確認できたと判断するのではなく、継続性や提供コストも含めて検証します。
東急の事例:営業活動を、顧客理解と仮説検証の機会にする
東急株式会社の「TsugiTsugi」では、新たな販売チャネルとしてアウトバウンドのインサイドセールスを活用。EmpowerXは、商談獲得とともに、活動を通じて何を確かめ、どのような情報を得るかを意識した支援を行っています。サービスの理解を深め、顧客の期待とのずれを抑える対応も紹介されています。
この事例から学べるのは、営業活動の開始時に「獲得したい成果」と「確かめたい仮説」の両方を定めることです。
診断の結果を、最初の一手に落とし込む
診断の結果は、確認できた事実と原因の仮説を分け、最初に試す行動まで決めて共有します。制作・集客・営業をつなぐ進め方は、実行編のEmpowerXメソッドで詳しく解説します。
まずは、次の項目を一枚にまとめてみてください。
現在の停滞:顧客との関係が止まっている段階
確認できた事実:発言、行動、活動結果
まだ不明なこと:原因の仮説と、その判断に足りない情報
最初に試す行動:対象、内容、実行担当
確認する時期と基準:何が分かれば継続・修正を判断できるか
数字を比較するときは、対象や集計単位をそろえます。今月のリード数と、過去のリードから生まれた今月の受注数をそのまま割っても、施策の良し悪しは判断できません。
自社のどこから着手するか、役割分担から相談する
「顧客に接触できていない」「商談にはなるが進まない」「必要な施策を動かす人が足りない」。こうした段階からご相談いただけます。
ご相談では、検証したいこと、既存の顧客・コンテンツ、社内で担える業務を確認し、優先する施策と役割分担を整理します。
EmpowerXの新規事業伴走支援では、営業とマーケティングの両面から、施策の提案・優先順位付け・KPI設計、コンテンツ制作、顧客開拓、商談・受注、CSまで、必要な範囲を組み合わせて支援します。




